(Chandos 10262)
total time: 76:24
BBC Philharmonic
Conducted by Rumon Gamba
Recorded in: Manchester 10 & 11 March 2004
英国映画の音楽を数多くの手がけてきたロン・グッドウィンの作品集。
演奏は、ラモン・ガンバ指揮BBCフィルハーモニック・オーケストラ。
(オリジナル・サウンドトラック音源ではありません)
ロン・グッドウィン Ron Goodwin (1925-2003)
レイフ・ヴォーン・ウィリアムスやアーサー・ブリスなど英国音楽の先達たちが遺した伝統を引継ぎ、明朗で端正な作風の音楽を映画に提供。
ダイナミックでスケールの大きい管弦楽を得意としていたことから、60〜70年代にかけて戦争映画に起用されることが多かった。
『633爆撃隊』
1964年製作の戦争映画。ノルウェイにあるドイツの燃料工場を爆撃する英国空軍のストーリー。フィヨルドの細く深い入り江の奥にある工場を空爆する爆撃隊の活躍が、スペクタクルに展開。後年『スター・ウォーズ』のクライマックスでも模倣された空中戦が最大の見せ場。主演はジョージ・チャキリス、クリフ・ロバートソン、マリア・ペルシーほか。
音楽はロン・グッドウィンの代表作のひとつで、これまでも何度か録音されている。英雄賛歌の「メイン・テーマ」と叙情詩的な「愛のテーマ」を収録。
『フレンジー』
1972年製作のアルフレッド・ヒッチコック監督作品。ロンドンで発生した連続女性絞殺事件。現代版切り裂きジャックの物語。異常な殺人事件を描きながら、背後にユーモアを匂わせるヒッチコック晩年の名人芸。ラストの切れ味も秀逸。主演は、間違えられた男にジョン・フィンチ、その友人にバリー・フォスター、料理自慢の奥さんに辟易しているスコットランド・ヤードの警部にアレック・マッコ−エン。
収録されている楽曲は、映画の冒頭、俯瞰撮影されたロンドン市街(テムズ河周辺)の場面に流れる威風堂々のテーマ曲。
『剣豪ランスロット』
おなじみ円卓の騎士ランスロットの物語。1963年製作。剣劇アクション映画というより、歴史ホームドラマといった趣向。ランスロット役は、製作・監督も兼任のコーネル・ワイルド。ジーン・ウォーレスがランスロットの奥方を演じている。
グッドウィンの音楽は、映画の貧相さを補うべく、勇壮かつロマンティックな豪華版。
『Deadly Strangers』(日本未公開)
1974年製作のスリラー映画。日本未公開。出演はヘイリー・ミルズ、サイモン・ウォード、スターリング・ヘイドンほか。
端正な作風のグッドウィンには珍しく、気怠くジャズィな香りが漂う小品。
『空軍大戦略』
ナチス・ドイツによる英国本土空襲を巻き返すべく、チャーチルの特命によって敢行された「英国の戦い(バトル・オブ・ブリテン)」を描いた戦争超大作。全編の半分以上が空中戦の場面で、本物のスピットファイヤやメッサーシュミットが火花を散らして飛び交う。ローレンス・オリヴィエ、クリストファー・プラマー、マイケル・ケイン、トレヴァー・ハワードほか、英国俳優総出演。1969年製作。
ロン・グッドウィンの代表作で、サントラ盤は何度もリリースされている人気盤。昨年(2004年)もVareseレーベルより再リリースされた。
再演奏の録音も多いが、今回は6曲から成る組曲を収録。「Luftwaffe March (Aces High)」「Prelude to Battle」「Work and Play」「Battle of Britain Theme」「Early Encounter」「Epilogue」
『Whirlpool』(日本未公開)
1959年製作のサスペンス映画。
ロン・グッドウィンが初めて手掛けた映画音楽。気品に満ちたメロディ。
『野獣の抱擁』
オリバー・リード主演の、いわゆる「美女と野獣」映画。野獣のような男に買われる聾唖の娘にリタ・トゥシンハム。カナダにロケーションした大自然の風景が素晴らしい。1967年製作。
グッドウィンのダイナミックなサウンドが、大自然の景観に深みを与えている。
『人間の絆』
サマーセット・モームの同名小説を、1961年に映画化。主演はローレンス・ハーヴェイとキム・ノヴァク。いわゆる西洋版「滝の白糸」(ちょっと違う?)。レスリー・ハワード、ベティ・デイビスによる1934年度版(邦題は「痴人の愛」)と比較するのは酷。これはこれでなんとか見られるメロドラマの佳作。
これもグッドウィンらしい端正で優雅なメロディ。
『モンテカルロ・ラリー』
「素晴らしきヒコーキ野郎」の地上版を狙った、クラシックカー・レースを描いたコメディ大作。残念ながら同じ趣向で同じトニー・カーティス主演の『グレートレース』にはちょっと及ばなかった。出演者はカーティスのほか、ゲルト・フレーベ、ピーター・クック、ワルター・キアリ、ミレイユ・ダルクと賑やか。
音楽も幾つかのモチーフを交錯させて賑やかに展開。今回は7分弱の組曲としてメドレー演奏されている。
『潜水艦X−1号』
ジェームズ・カーン主演の潜水艦映画。中学生のころにテレビの映画劇場で観たはずだが、中身はまったく記憶に残っていない。タイトルだけは覚えていた。
そんなことはお構いなしに、ロン・グッドウィンの音楽は、戦意昂揚、勇猛果敢ないつもの戦争サウンド。
「ミス・マープルのテーマ」
アガサ・クリスティが創造した安楽椅子探偵ミス・マープル。彼女を主人公にした映画はマーガレット・ラザフォード主演で4本製作されているが、いずれも日本未公開。音楽担当はすべてロン・グッドウィン。
「Murder She Said」(1961)「Murder at the Gallop」(1963)「Murder Most Foul」(1964)「Murder Ahoy」(1964)。
今回録音された楽曲は、シリーズに共通して用いられていた「ミス・マープルのテーマ」。軽快なロカビリーのリズムにのせて、老嬢の稚気がコミカルに表現されている。
『クロスボー作戦』
またまた戦争映画。1965年製作、主演ジョージ・ペパード、トム・コートネイ、トレヴァー・ハワードほか。ナチス・ドイツのV兵器開発工場に潜入し、味方の爆撃を誘導するという、英国戦争冒険活劇の王道をいくストーリー。
去年(2004年)映画音楽専門雑誌を出版しているFSMから、『荒鷲の要塞』とカップリング(2枚組CD)でサウンドトラック音源盤が限定リリースされた。血湧き肉躍るグッドウィン印の英雄的(ヒロイック)マーチ。
『Clash of Loyalties』(日本未公開)
英国から独立すべく反旗を翻したイラク人を描いた、1983年製作の英国=イラク合作映画。日本未公開。主演はオリバー・リード、ジェームズ・ボーラム、ヘレン・ライアンなど。
「The Battle Theme」「Dharis' Theme」「The Riot Theme」の3曲から成る組曲を収録。中間部に流れる民族音楽テイストの「Dharis' Theme」が珍しい。冒頭と終盤の楽曲は、いつもながらのグッドウィン節。
『美女と野獣』
おなじみの「美女と野獣」。主演はジョージ・C・スコット、トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー、ヴァージニア・マッケンナほか。1975年製作のアメリカ映画。(日本未公開?)
ロマンチックな「愛のテーマ」を収録。
『ナバロンの嵐』
ロバート・ショウ、ハリソン・フォード、エドワード・フォックス、フランコ・ネロが出演した『ナバロンの要塞』の後日談。1978年製作。
ダイナミックなマーチが魅力で、映画公開時からサントラ盤の発売が待望されていたが、未だ実現されていない。今回はテーマ曲(3分10秒)のみの演奏。作曲者自身が指揮した組曲の録音もある。
『荒鷲の要塞』
アリステア・マクリーン原作による戦争冒険活劇。クリント・イーストウッド、リチャード・バートン主演。1968年製作。同じ原作者による『ナバロンの要塞』と同様、あの手この手でサスペンスと見せ場をてんこ盛りにした、サービス精神旺盛な娯楽編。
サウンドトラック音源盤は、上記『クロスボー作戦』とのカップリングで、昨年(2004年)FSMより限定リリースされている。重厚で少し翳りのあるテーマ(3分)を収録。
『素晴らしきヒコーキ野郎』
飛行機が実用化されだした20世紀初頭(1910年ごろ)に開催されたロンドン=パリ間飛行レースを、国際的オールスター・キャストで描いた、ドタバタ超大作。日本代表で石原裕次郎も少しだけ顔を見せる。
いろんなモチーフを盛り込んだ、6分16秒の組曲を収録。
人気の戦争映画ばかりでなく、ロマンチックな調べも過不足なく網羅し、ロン・グッドウィンの集大成と呼ぶにふさわしい内容。
2001年にリリースされた「アーサー・ブリスの映画音楽 The Film Music of Sir Arthur Bliss」に続いて、強く推薦したいカバー・コンピレーションの1枚。デジタル録音の音質も素晴らしい。
Chandosレーベルの新録音盤にハズレなし。
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