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映画音楽作曲家

Warriors of the Silver Screen (1997)

(Silva Screen FILMXCD 187) 2CD
Warriors of the Silver Screen
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Disc1
『隊長ブーリバ』 組曲 (11:54)
フランツ・ワックスマン
『アントニーとクレオパトラ』 組曲 (6:40)
ジョン・スコット
『スパルタ総攻撃』 マーチ (3:58)
マノス・ハジダキス
『トゥルー・ナイト』 組曲 (11:10)
ジェリー・ゴールドスミス
『ロブ・ロイ ロマンに生きた男』 ロブとマリー (3:32)
カーター・バーウェル
『大将軍』 序曲とメイン・タイトル (4:19)
ジェローム・モロス
『エル・シド』 序曲/愛のテーマ (7:45)
ミクロス・ローザ
『ヘンリー五世』 組曲 (13:28)
パトリック・ドイル
Disc2
『炎と剣』 組曲 (10:00)
フランツ・ワックスマン
『スパルタカス』 メイン・タイトル/愛のテーマ (6:26)
アレックス・ノース
『最後の谷』 テーマ (3:36)
ジョン・バリー
『ブレイブハート』 エンド・タイトル (7:03)
ジェイムズ・ホーナー
『バグダッドの盗賊』 組曲 (11:46)
ミクロス・ローザ
『コナン・ザ・グレート』 組曲 (4:33)
ベイジル・ポールデュリス
『ベン・ハー』 組曲 (10:16)
ミクロス・ローザ
『アルゴ探検隊の大冒険』 序曲 (1:57)
バーナード・ハーマン
『ヴァイキング』 組曲 (17:52)
マリオ・ナシンベーネ
DOLBY SURROUND
ENHANCE CD (Quick Time)

Swashbucklers
Swordsmen of the Silver Screen (1997)

(Silva Screen FILMXCD 188) 2CD
Warriors of the Silver Screen
Disc1
『海賊ブラッド』 メイン・タイトル(2:52)
エーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト
『女王エリザベス』(未公開) 序曲(7:17)
エーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト
『フック』 メイン・テーマ (4:09)
ジョン・ウイリアムス
『真紅の海賊』 序曲 (7:24)
ウィリアム・オルウィン
『ウィロー』 ウィローのテーマ (3:55)
ジェイムズ・ホーナー
『ロビン・フッド』 組曲 (4:56)
ジェフリー・バーゴン
『ロビン・フッド』 序曲 (3:00)
マイケル・ケイメン
『ロビンとマリアン』 組曲 (7:38)
ジョン・バリー
『ロビン・フッドの冒険』 組曲 Part1 (6:26)
エーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト
『ロビン・フッドの冒険』 組曲 Part2 (4:05)
エーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト
Disc2
『シー・ホーク』 組曲 (6:29)
エーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト
『快傑ゾロ』 序曲 (4:42)
アルフレッド・ニューマン、ヒューゴ・フリードホファ
『デュエリスト 決闘者』 組曲 (8:10)
ハワード・ブレイキ
『大海賊』 序曲 (3:32)
エルマー・バーンステイン
『ドン・ファンの冒険』 組曲 (7:54)
マックス・スタイナー
『MONTY PATHON'S THE MEANING OF LIFE』 序曲 (5:35)
ジョン・デ・ペズ
『シンバッド七回目の航海』 メイン・タイトル (2:02)
バーナード・ハーマン
『シンドバッド黄金の航海』 組曲 (4:52)
ミクロス・ローザ
『放浪の剣豪』 序曲 (3:54)
マリオ・ナシンベーネ
『カットスロート・アイランド』 メイン・タイトル〜モーガンズ・ライド (4:41)
ジョン・デブニー
DOLBY SURROUND
ENHANCE CD (Quick Time)

MV(メディア・ヴェンチャーズ)世代の愛好家にはピンとこないかも知れないが、『スター・ウォーズ』以前から映画音楽に親しんできた俺等の世代にとって「燃える映画音楽」とは、ここに採り上げられているエーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト、マックス・スタイナー、ミクロス・ローザ、フランツ・ワックスマンたちが提供してくれた、活劇、戦争、西部劇の音楽だった。
ジョージ・ルーカスは『スター・ウォーズ』の作曲をジョン・ウイリアムスに依頼するにあたって、かつてコルンゴルトやマックス・スタイナーが担当した海賊映画タイプのシンフォニック・スコアを要求していた。
『スター・ウォーズ』の原点が、一連の「海賊映画」であることに異論のある人はいないだろう。そっくりのフレーズが随所に出てくるので、原典をしらない若い方は驚かれるに違いない。
これら古典的作品を世に広めたのは、70年代前半に連続してリリースされた、チャールズ・ゲルハルト(指揮)とナショナル・フィルハーモニック・オーケストラによる再演盤(RCA)だった。このシリーズは高く評価され、その鮮度は人気とともに今だ衰えていない。どうしても演奏を比較してして聴いてしまうが、勘弁願いたい。それほどまでに、ゲルハルト盤は出来が良かったのだ。
ここで紹介するシティ・オブ・プラハ・フィルの演奏を気に入った方は、ぜひRCAのゲルハルト盤にも耳を傾けていただきたい。
最初っからシティ・オブ・プラハ・フィルの悪口のようになってしまったが、このCDの演奏も、そう悪いものでははない。敢闘賞をあげてもいいくらいの熱演がズラリと並んでいる。
1935年の『海賊ブラッド』は渡米したエーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルトが初めて映画音楽を手掛けた記念碑的作品。ダイナミックでパワフルな演奏。続く『女王エリザベス』は日本未公開ながら気品に満ちた荘厳さが大作の風格をみせる。『ロビン・フッドの冒険』は、前半、ロビンとマリアンのロマンス、後半は悪代官のマーチと森林でのバトル、2つのトラックに分かれている。どちらもコルンゴルトの作風を端的に示した選曲だろう。コミカルな木琴のフレーズなど、ジョン・ウイリアムスがよく真似している。ディスクの2枚目には豪快なファンファーレで幕を開ける『シー・ホーク』も収録されていて、これらの作品はいずれもコルンゴルトの代表作。ハリウッド黄金期の映画音楽の在り方を決定づけてしまったロマンティシズムに満ちた名作。女王陛下の特命を受けたエロール・フリンが海賊退治の旅から無事帰還する『シー・ホーク』のフィナーレは、合唱付きの演奏でもっと盛り上げて欲しかった。
『フック』は『ピーター・パン』の後日談。ロビン・ウイリアムス扮する中年男が自分がピーター・パンであったことに目覚め、空を飛ぶ。スピルバーグの幼稚な趣味が横溢し賑やかな割にぜんぜん面白くない。ジョン・ウイリアムスはこの時期同じようなメロディ(『ホーム・アローン』『遙かなる大地へ』など)を連発していた。
端正なシンフォニック・サウンドを愉しみたいならイギリスの映画音楽をお薦めする。『真紅の盗賊』のウィリアム・オルウィンは、ウィーン出身のコルンゴルトとはひと味違ったロマンティシズムを匂わせる。冒頭の早いテンポ、中盤のコミカルな展開は軽業師出身のバート・ランカスターが飛び跳ねているせいだろう。
90年代初頭に製作された2本のロビン・フッド映画を担当したのは、ジェフリー・バーゴンとマイケル・ケイメン。どちらも映画はスカだったが、二人の作曲家はよく健闘していたと思う。
そのケイメン版『ロビン・フッド』の予告編に使用されていたのが、ジェイムズ・ホーナーの『ウィロー』だった。ここでは尺八がフルートに置き換えられて演奏されている。
ロビン・フッド伝説の後日談を描いたマーク・レスター監督の『ロビンとマリアン』は、ショーン・コネリーとオードリー・ヘプバーンの枯れた演技が印象深い。歳をとっても少年の心を持ち続けているってのはこの映画で描かれているような境地のことなんだよ、判るかね、『フック』のスピルバーグくん。このサントラのリリースを公開時にどれほど望んだことだろう。結局発売されなかったが、ジョン・バリーに積極的なSILVAがこうして組曲で録音してくれた。嬉しい。さらにSILVAは1枚もののスコア盤まで発売してくれた。偉い。シャーウッドの森の夜明け。小川で顔を洗うコネリーとヘプバーン。悪代官ロバート・ショウの命令でロビン討伐にやってくる兵隊たち。そして永遠の彼方へと飛んでゆく弓矢。書いていて胸がじ〜んとしてきた。名作です、これは。未見の方は是非ご覧ください。
アルフレッド・ニューマンとヒューゴ・フリードホファの共作による『快傑ゾロ』も楽しい。この二人の作曲家はお互いの才能を認め合いプライベートでも仲が良かったらしい。ニューマンの推薦で担当した『我等の生涯の最良の年』でフリードホファがアカデミー作曲賞を受賞したエピソードは、有名だから皆さんご存知ですね。
燃える映画音楽大全集の如きこの2枚組CDで唯一異質なのが、『デュエリスト 決闘者』のハワード・ブレイキ。19世紀の初頭、ナポレオンの時代にキース・キャラダインとハーヴェイ・カイテルが数十年にわたって幾度も幾度も決闘を繰り返す、執念の物語。監督はスタイリストのリドリー・スコット。
『大海賊』はエルマー・バーンスティンが最もイキが良かった1958年の作品。メロディの冒頭など随所に『十戒』のニュアンスが感じられるのはご愛敬。
コルンゴルトと並んでワーナー活劇に華を添えたのがマックス・スタイナーだった(ワーナー・ブラザーズのタイトル音楽もスタイナーの作曲)。ここに収められた『ドン・ファンの冒険』を聴くと、全体的にスパニッシュな味付けがなされているものの、同郷のコルンゴルトと共通するウィーンの優雅な香りも感じられる。
ミクロス・ローザはときおり東洋的なコード進行を用いることがあるが、『シンドバッド 黄金の航海』は日本の時代劇に付けても似合いそうな音楽である。中盤の「カリ神との戦い」を聴いていると、村祭りで賑わう秋葉神社の境内で、桶屋の鬼吉が大暴れしていそうな情景が目に浮かんでくる。
マリオ・ナシンベーネの音楽には荘厳な風格(ハッタリ)が現れやすい。ライト感覚のチャンバラ活劇だった『放浪の剣豪』も、ナシンベーネの音楽だけを聴いていると、超大作の雰囲気が漂ってくる。しかし、このメロディ、どこかで聴いたことあるな、と思っていたらハマー・プロ製作の恐竜映画だった。ナシンベーネ、恐るべし。
最後に期待の新人ジョン・デブニーの登場。燃える映画音楽愛好家にとって、この人の『カットスロート・アイランド』は意外な収穫だったんじゃないだろうか。管楽器鳴らしまくりでリズムにも力が漲っている。これにコーラスが加わった日にゃ、ケツから火吹いてブッ飛びまくりですよ!
「燃える映画音楽とはこれだ!」と歓喜の声を張りあげたくなるのが、フランツ・ワックスマンの『隊長ブーリバ』だ。コサックの騎馬隊が平原を疾走しながら合流して大部隊になってゆく移動撮影の爽快さが、見事に表現されている。民族色を匂わせるバラードも良い。ワックスマン活劇音楽の白眉。
ワックスマン作品からは『炎と剣』の組曲も収められている。20世紀フォックス製作、ヘンリー・ハサウェイ監督による冒険活劇だが、気の抜けた剣劇場面にがっかりした記憶がある。映画は駄作でも音楽は一流。テーマのメロディが古き良き時代のロマンチシズムを想わせ、トランペットのファンファーレがヒーローの登場を凛々しく告げる……しかし、このころのジャネット・リーはすこぶる綺麗だったなぁ。
ジョン・スコットは未公開作品ばかりで紹介される機会が少ない作曲家だが、『ファイナル・カウントダウン』だけは異常に人気がある(人気の秘密は、あの曲のオリジナルが収録されているから?)。『アントニーとクレオパトラ』はメロディが美しく、彼の代表作と呼んでいい名曲だと思う。
イギリス映画以上に公開されることの少ないギリシャ映画だが、マノス・ハジダキスはミキス・テオドラキスと並んで、日本では名を知られた作曲家。ただし収録されている『スパルタ総攻撃』はルドルフ・マテ監督によるアメリカ製作。60年代はやたらと古代戦争物が作られていたが、この映画もその1本で、ギリシャ史の中からテルモピレーの戦いを描いている。勇壮なマーチのリズムに悲壮感が感じられるのは、この戦争が玉砕戦だからなのだろう。
ゴールドスミスの『トゥルー・ナイト』の荘厳なコーラスを聴くと、『オーメン』が大好きな俺なんかは、この作曲家にもっと合唱曲を書いて貰いたい気分になるが、合唱曲でなくとも編成に応じた曲をオールマイティに提供し続けているんだから、横から余計な注文を出すこともない。
『大将軍』のジェローム・モロスは、日本では『大いなる西部』くらいしか知られていないが、なかなか迫力のあるスコアを書く作曲家だ。SILVAレーベルは彼に惚れ込んでいるらしく、埋もれたスコアを発掘してカバー演奏集もリリースしている。いいぞ、SILVA! 頑張れ、SILVA!
ミクロス・ローザの『バグダッドの盗賊』は脅威の特撮映画で、カラフルな色彩も楽しい娯楽ファンタジー。4つのシークエンスからなる組曲も、映画の楽しさを充分に伝えてくれている。ちなみに、「アラジンと魔法のランプ」を題材にした映画は数多く作られているが、これを超える作品にはまだお目にかかったことがない。2曲目の「姫君の恋」のエキゾチックなメロディがお気に入り。ローザ作品は他に『ベン・ハー』『エル・シド』も収録されているが、この2本の大作について多くを語る必要はないだろう。
『コナン・ザ・グレート』は燃える映画音楽選手権の名誉選手として、永久欠番にしてもいい。ここでは「Prologue」と「Anvil of Crom」が1曲にまとめられて演奏されている。SILVAレーベルには別にコーラスが加わった録音もあり、それは『CINEMA CHORALE CLASSICS』というアルバムに入っている。(2002年にリリースされた『The Fantasy Album』で、2つのトラックは1曲(10:37)にまとめられた。けっこうな迫力で楽しめる)
『ヘンリー五世』は、パトリック・ドイル(と相棒ケネス・ブラナー)の名を一躍世界に知らしめた名作。作られた時点ですでに古典の風格を備えたスコアに、公開当時は驚いたものだ。オリジナルではドイル自身が歌っていたが、このCDに収められたカウチ・エンド・フェスティバル合唱団のコーラスもなかなかいい。
アレックス・ノースの『スパルタカス』からは「メイン・タイトル」と「愛のテーマ」を収録。ポピュラー・ヒットに恵まれないノース作品のなかでも屈指の人気曲。
『宇宙の7人』、『スター・トレック2 カーンの逆襲』、『銀河伝説クルール』で映画音楽ファンをアッと驚かせたジェイムズ・ホーナーも、近年はマンネリが過ぎて、担当作品は多いものの次第に愛好家たちからソッポを向かれつつある。そんなこんなで散々なホーナーだが、『ブレイブハート』は一部のファンから絶賛されている名曲。オリジナルとは楽器の音色が異なる演奏だが、なかなか良い。
このCDの目玉商品なのが、マリオ・ナシンベーネの『ヴァイキング』だ。7曲(17:52)が収められている。ストーリーはギリシャ悲劇をベースにしたような、肉親と知らずに殺し合う親子・兄弟の話。クライマックスの壮絶なアクション場面が凄まじく、この映画を観て俺はカーク・ダグラスのように顎が割れた奴は恐い人種なんだと警戒心をいだくようになった。(もう一人の顎が割れている登場人物、アーネスト・ボーグナインは、物語の元凶となるバイキングの親玉だ!)。この映画でもお姫様役はジャネット・リー。さて音楽のほうだが、これが30年くらい前に観た映画の印象とは異なり、真っ当な海賊映画の音楽となっている。メイン・テーマのメロディは大海原を悠々と航行する帆船を想像させ陽性の雰囲気。幻想的で美しい「Love Scene」を経て、勇壮な船出の描写「Voyage and Landing in Britain」からクライマックスの「Attack on the Castle」へと迫力ある演奏が続く。終曲「Funeral & Finale」で高らかと謳歌されるコーラスは実に堂々としたもので、記憶に残っていた陰惨さはほとんど感じられなかった。オリジナルは伊Legend レーベルから出ていたが、約18分も収録されているし、これで充分な気がする。


soe006; E-mail address; soe006@hotmail.com