site-logo The Classic Film Scores of Bernard Herrmann (1974)
映画音楽作曲家

市民ケーン/クラシック・フィルム・スコア・オブ・バーナード・ハーマン
Citizen Kane: The Classic Film Scores of Bernard Herrmann (1974)

RCA (ARL 1-0707) LP
The Classic Film Scores of Bernard Herrmann
『危険な場所で』 On Dangerous Ground (1950)
01 The Death Hunt (2:23)
『市民ケーン』 Citizen Kane (1941) [13:48]
02 Prelude: Xanadu/Snow Picture (3:17)
03 Theme and Variations (3:26)
  (Breakfast Montage)
04 Aria from Salammbo (4:16)
  Kiri Te Kanawa, soprano
05 Rosebud and Finale (2:41)
『十二哩の暗礁の下に』 Beneath the 12-Mile Reef (1953) [11:32]
06 The Sea/The Lagoon (4:41)
07 Descending (1:51)
08 The Octopus/Homecoming (4:54)
『戦慄の調べ』 Hangover Square (1944)
09 Concerto Macabre
  for piano and orchestra(11:57)
  Joaquin Achucarro, piano
『蛮地の太陽』  White Witch Doctor (1953) [13:46]
10 Talking Drums/Prelude/The Riverboat/
  Patticoat Dance/The Safari (3:57)
11 Tarantula/The Lion (1:28)
12 Nocturne (3:47)
13 Abduction of the Bakuba Boy/
  The Skulls (1:56)
14 Lonni Bound by Ropes/Departure (2:28)
total playing time 52:05
Conducted by Charles Gerhardt
National Philharmonic Orchestra
Kiri Te Kanawa(soprano)
joaquin Achucarro(piano)
Produced by George Korngold
Recording Engineer by K.E. Wilkinson
Recorded at Kingsway Hall, London
June 11-13, 1974
Label RCA (ARL 1-0707) LP
Release date 1974
1970年代にジョージ・コルンゴルト(エーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトの次男)のプロデュース、チャールズ・ゲルハルト指揮ナショナル・フィルによって録音された「クラシック・フィルム・スコア」シリーズの1枚。
オリジナル・スコアに則したオーケストレイション、ナショナル・フィルの卓越した演奏、ホールの反響音を最大限に活かした高音質録音、再演盤ながら愛好家を満足させる三要素を満たし、現在に至るも広く支持を得ている名盤。
このシリーズは、一般的にポピュラー音楽のカテゴリーで語られることが多かった映画音楽の認識を覆す、革新的な企画だった。
1974年に録音された「市民ケーン/バーナード・ハーマン集」では、『危険な場所で』『市民ケーン』『十二哩の暗礁の下に』『戦慄の調べ』『蛮地の太陽』からの音楽を収録。ヒッチコック作品やハリーハウゼン特撮映画に比べ地味なタイトルが並ぶが、いずれも手抜きのない優秀なスコアが採り上げられている。
なお、この録音には、バーナード・ハーマンも立ち会っていた。
アルバムの幕開けは、『危険な場所で』から「死の狩猟」。
強烈なホルンの咆哮に度肝を抜かれる迫力満点の演奏。
『市民ケーン』組曲はハーマン自身が編纂した「ウェルズ・ライズ・ケーン」と異なり、荒廃した大邸宅やケーンの死を描写した「桃源郷:雪景色」「バラのつぼみ/フィナーレ」をメインに据え、明るく快活な「ウエルズ・ライズ・ケーン」と対照的な選曲で構成。暗鬱な映画の本質を捉えた、重厚な演奏となっている。
「ウェルズ・ライズ・ケーン」と曲名が重複している「テーマ・アンド・ヴァリエーション(朝食場面のモンタージュ)」は映画と同じヴァージョン。『偉大なるアンバーソン家の人々』からのメロディは入っていない。
今回の組曲のハイライトとなっているのが、劇中、オペラ公演の場面で歌われた「サランボのアリア」。ソプラノはディムの称号を持つニュージーランド出身の歌姫キリ・テ・カナワ。録音当時30歳前後だったカナワの声も若々しく美しいが、ドイツ・オペラの風格を漂わせたフィナーレ部分も派手に盛り上がって迫力がある。
『十二哩の暗礁の下に』組曲は、シネマスコープの大画面に拡がる大海原を想像させる壮大なスケール感が素晴らしい。
映画は失敗作で、若い男女(新人ロバート・ワグナーとテリー・ムーア)のラブ・ストーリーに新味はなく、見せ場となるべき海中撮影の場面はカラーの発色が悪く、せっかくのシネスコ画面が活かされていなかった。
20世紀フォックスの社長ダリル・F・ザナックは、音楽によって作品の質が向上されたとハーマンを絶賛。パープの効果的な使い方が独創的で、色彩感豊かなサウンドとなっている。
海中場面で醸し出される不気味な雰囲気描写は、後年のSF映画やホラー映画で多用され、定番のサウンドとなった。
(ジェリー・ゴールドスミスのファンの方は、『スター・トレック:TMP』を連想されるかも知れない)
神経症の作曲家を主人公に設定したスリラー『戦慄の調べ』からは、後期ロマン派のスタイルのピアノ・コンチェルト「死のピアノ協奏曲」を収録。
ピアノ演奏は世界の主要オーケストラと共演し、ハリエット・コーエン賞も受賞しているホアキン・アチュカロ。
それまで軽んじられて扱われていた映画音楽の録音に、このような実力のあるピアニストを連れてくるところが、半端でないことの証明。
日本での、国内ミュージシャンがアルバイト気分で録音した、実体不明オーケストラによる「映画音楽全集」とは格が違う。
タムタムのリズムで一気にアフリカのジャングル地帯へと導いてくれるのは『蛮地の太陽』。
音楽だけを聴いていると冒険活劇を連想してしまいそうだが、内容はジャングルの奥地で原住民のために献身的に働く女医(スーザン・ヘイウォード)の物語。
映画の評価は芳しくなく、音楽だけが残った。
『十二哩の暗礁の下に』同様、情景を活写する技の冴えが際立っているスコア。
CD化(1989年)の際にドルビー・サラウンドでリミックスし、自然なホールの反響音、残響音をデリケートに再現。四半世紀以上も前の録音だが、古臭さは微塵も感じさせない。

Citizen Kane
The Classic Film Scores of Bernard Herrmann

RCA/BMG (0707-2-RG) CD
The Classic Film Scores of Bernard Herrmann
Sound Design and Dollby Surround remix by Grover Helsley
Remastering Engineer by Larry Franke
Label RCA/BMG (0707-2-RG) CD
Release date 1989
上記LP盤のCD化。
ドルビー・サラウンドでリマスタリングされている。
2011.02 CD再発売されました

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