ルイ・アームストロング
Louis Armstrong (1901-1971)
1938年5月、一人のトランペッターが「口当たりのいいお説教をジャズにしてお送りしましょう」と前置きして演奏した「聖者の行進……When The Saints Go Marching In」は、黒人教会の牧師から厳しい批判を受けた。
神聖な宗教歌をジャズで演奏するのはけしからんというのがその理由だ。
いまではディキシーランド・ジャズのスタンダードとなった「When the Saints Go Marching In」も、レコード録音の初期の時代には様々な物議をかもしていたらしい。黒人同士の間でも、文化の違い宗教観の違いから議論百出したと言われている。
ルイ・アームストロング、1901年、ニューオリンズ生まれ。
少年時代は素行が悪く、非行を重ねた末、更生施設に収容されてしまう。
そこで教官にコルネットの手ほどきを受けたのが彼の音楽人生のスタートとなった。
出所後は雑役夫として生計を立てるかたわら、地元のバンドで修行を積み、23年3月、キング・オリバー楽団の一員として最初のレコーディングを果たした。
ルイ・アームストロングはジャズの歴史のなかで最初に現れた天才であり、彼の出現はジャズそのものを大きく変える巨大な事件でもあった。ソロによるアドリブの重要性を示した彼の演奏に、影響を受けたジャズメンの数は計り知れない。
今年(2002年3月)のアカデミー賞では、シドニー・ポワチエの名誉賞、デンゼル・ワシントンの主演男優賞、ハリー・ベリーの主演女優賞と、黒人俳優たちのオスカー受賞に話題が集中した。
マスコミはこぞって黒人の地位向上に貢献したポワチエを讃えていたが、その土壌を作り上げてゆくまでにサッチモを初めとする先人たちの活躍があったことを、私たちは忘れてはならない。
大衆性を重んじたサッチモは、映画にも数多く出演している。
『グレン・ミラー物語』 『上流社会』 『五つの銅貨』などの映画を観て、濁声で唄う彼の姿を記憶している人も多いだろう。
サッチモは常に大衆に受けることに専念したエンタテイナーであり、同時にジャズを芸術の域まで高めたアーティストでもあった。
今宵も、サッチモの思い出に乾杯!