ヴィクター・ヤング
Victor Young (1900-1956)
1944年に製作されたアメリカ映画『呪いの家』(原題:The Uninvited)は、その題名からも分かるように、幽霊屋敷を舞台にしたホラー映画だった。
監督リュイス・アレン。主演はレイ・ミランド、ルース・ハッセイ、ドナルド・クルプス。
日本公開は終戦の翌年、昭和21年6月であったがヒットしたとの記録はない。その後幾度かテレビ放映されたようだが、作品の評価は低く、ビデオも発売されていない。
時の流れに埋もれてしまったB級映画。
そんな取るに足らない怪奇映画のバックに流れていたのが、ヴィクター・ヤングが作曲した「星影のステラ……Stella by Starlight」だった。
ヴィクター・ヤング、1900年、イリノイ州シカゴ生まれ。
最初はスウィング・バンドのピアニスト兼アレンジャーとして音楽人生をスタートさせたヤングだったが、1930年代半ばから映画音楽の作曲を始めるようになり、生涯に 168本の映画と2本のテレビ番組の音楽を手掛けた。
『誰が為に鐘は鳴る』 『ラブレター』 『黄金の耳飾り』 『腰抜け二丁拳銃』 『愚かなり我が心』 『地上最大のショウ』 『リオ・グランデの砦』 『サムソンとデリラ』 『シェーン』 『黒い牡牛』 『戦略空軍指令』 『旅愁』 『愛の泉』……多彩なジャンルの映画を担当したヴィクター・ヤングは、たとえB級の駄作であってもA級の超大作と同じように、そのすべての映画に魅力的な音楽を提供した。
アカデミー賞には作曲賞・主題歌賞併せて 26回もノミネートされている。
しかし、オスカーを受賞したのは 1956年の『八十日間世界一周』の一度だけで、しかも授賞式が行われたとき、ヤングはすでにこの世の人ではなかった。
彼が作曲した美しく親しみ易いメロディは、スタンダード・ナンバーとして、現在でも多くのミュージシャンに愛され、演奏され続けている。
B級ホラー『呪いの家』が人々の記憶から消え去ったとしても、「Stella by Starlight」のチャーミングなメロディは永遠に不滅なのだ。
今宵も、ヴィクター・ヤングに乾杯!