1941年
作詞/トム・アデア Tom Adair
作曲/マット・デニス Matt Dennis
冬のマンハッタンに、ちらほらと雪が舞っていたね
舗道には薄氷も張っていた
だけど恋の魔力は、天気さえも一瞬に変えてしまったんだよね
君の毛皮のコートの襟を、僕が買ったスミレの花で飾ったら
少しだけ春が感じられたこと、憶えているかい?
12月なのに、まるで4月のような気分になったね
雪は花のうえに舞い降り、そして溶けてしまった
雪はまるで夏の花に付いた露のように見えたね
君の毛皮のコートの襟を、僕が買ったスミレの花で飾ったら
冬空に陽光が射したこと、憶えているかい?
君は可愛らしく微笑んでくれたね
あのときから二人が恋に落ちたこと、分かっていたんだよ
君の毛皮のコートの襟を、僕が買ったスミレの花で飾ったときからね
トミー・ドーシー楽団の専属アレンジャーだったマット・デニスが1941年に作曲した、冬の定番ラヴソング。
マット・デニスは同楽団のために幾つかの曲を提供していますが、最も有名なのがこのバラッド・ナンバーで、フランク・シナトラ、ジョー・スタッフォード、コニー・ヘインズなど、ドーシー楽団に在籍していた歌手はこぞってレパートリーにしていました。
日本では「コートにすみれを」の邦題でも知られています。
いちばんのお気に入りは、やっぱりシナトラのCapitol盤(「Song for Young Lovers」1953年)ですね。このレコードは10インチ(25センチ)LPとしてリリースされましたが、現在は同じく10インチ盤の「Swing Easy!」とカップリングされてCD化されています。
ネルソン・リドル編曲指揮のビッグバンドをバックに、スゥインギーで、ダイナミックで、スウィートな名唱が16曲もまとめて聴ける、空前絶後のお徳用盤。絶対に損はさせません、お持ちでない方は是非この機会にお買い求めください。ヴォーカル・アルバムの基本中の基本、死ぬまでつき合える、正真正銘の銘盤なのであります。
ビリー・ホリデイのColumbia盤は最晩年(1958年)の録音だけに、衰えた声に哀感を漂わせた絶品。枯れススキのようなスミレが、胸の奥までジ〜ンと染みます。
作曲したマット・デニス自身も録音しています(「Plays and Sings」=1950年のライヴ盤)が、俺はこのソングライターを、あまり巧い歌手とは思っていないんですね。
シナトラやビリー・ホリデイのあとではなおさらです。
そこで、新しい録音を1枚ご紹介。
今年(2003年)10月に来日したスウェーデンのモニカ・ボーフォースです。
推薦盤「A Certain Sadness」は、変わった編成のスウィート・ジャズ・トリオ(コルネット、ギター、ウッドベース)との共演盤で、メロウなスタンダード・ナンバーばかり12曲収録されています。
日本盤CDのジャケットもオシャレで、ちょっと背伸びしてる女の子を騙すとき口説くときのBGMに最適な1枚。<火爆!
演奏盤で傑出しているのは、1957年にリーダーとして初めて録音したジョン・コルトレーンのセッション。メロディを素直に切々と歌い上げて好感が持てます。後年の泥酔した大蛇の如くのたうち回るコルトレーンとは、まるで別人。コルトレーン・アレルギーの方にオススメ。レッド・ガーランドのピアノ・ソロも聴きものです。
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