1930年
作詞/アイラ・ガーシュウィン Ira Gershwin
作曲/ジョージ・ガーシュウィン George Gershwin
愛しい人よ、私を抱きしめて
かけがえのない人よ、私を抱きしめて
一目見ただけで私の心は酔いしれてしまう
貴方だけが私を解放してくれる
魅力いっぱいの貴方
貴方のすべてが大好きだけど
私はあなたの身体に腕を回すのが、いちばん好きなの
だから、ベイビィ
おいでパパのところへ、おいで
私の愛しい人、抱きしめたい貴方よ
ガーシュウィン兄弟が1928年のミュージカル『East is West』のために用意していた曲でしたが上演延期となり、1930年のミュージカル『ガール・クレイジー Girl Crazy』によって初めて披露されました。初演の舞台で唄ったのはジンジャー・ロジャース。
このときの伴奏はレッド・ニコルスとファイヴ・ペニーズで、当時のメンバーにはベニー・グッドマン、グレン・ミラー、ジミー・ドーシー、ジーン・クルーパ、ジャック・ティーガーディンなど、夢のように豪華な顔ぶれが揃っていました。
1932年に映画化された『頓珍漢嫁探し』ではアーリーン・ジャッジ、1943年の再映画化『ガール・クレイジー(未公開)』ではジュディ・ガーランドが唄い、コニー・フランシス主演の3度目の映画化(『青空のデイト』1965年)で唄っていたのはハーブ・プレスネル。この映画には、ハーマンズ・ハーミッツ、ルイ・アームストロング、サム・ザ・シャムとザ・ファラオス・リベラーチェなども特別出演していました。
ジュディ・ガーランドのヴァージョンは、2002年のスピルバーグ映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でも流用されていましたね。
オリジナルの舞台ではヴァース(前口上のようにして唄われる導入部)を含め、1コーラス目を男性が、2コーラス目を女性が唄っていため、歌詞は(男性用と女性用の)2通りあるのですが、現在は(男性が唄っていた)1コーラス目しか唄われていないようです。
女性歌手のなかには、「おいでパパのところへ、おいで」の箇所を「おいでママのところへ、おいで」と換えて唄っている人もいます。
40〜50年代のハリウッドでは、オーディションの定番曲となっていたそうで、ドリス・デイも再起を賭けた映画会社のオーディションでこの曲を唄わされたと、何かの本に書いてありました。
「抱かれたい」「抱いて」……そんな歌なので、やはり女性の声で聴きたい曲ですが、あまり濃厚に迫られると逆効果で、ギャグっぽくなってしまいます。
(例:オリータ・アダムス『The Very Best of Oleta Adams (Mercury)』)
クラシック畑でイチバンのお気に入りなのがキリ・テ・カナワで、この人も『Kiri Sings Gershwin (Angel)』というガーシュウィン・ソングブックをリリースしています。あまりにも清潔過ぎて、学校の音楽教師に説教されているような気分です。
ガーシュウィン・ソングブックではエラ・フィッツジェラルドのVerve盤が有名ですけど、今回は清潔なお色気が感じられるジュディ・ガーランド、クール・ヴォイスが魅力のクリス・コナーを推薦しておきます。
映画『マンハッタン』のサウンドトラック盤は、Jazzに馴染みのない人でもすんなり聴ける、ガーシュウィン入門に最適な1枚。ズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィル、ディック・ハイマンのピアノ・トリオ、ルイス・イーリーのヴァイオリンをフィーチャーしたクインテットなどの編成で、「ラプソディー・イン・ブルー」をはじめガーシュウィン・ナンバーが、18曲演奏されています。
女性シンガーだけだと、性差別だと言われそうなので、最後にシナトラを1枚追加。
CD『Girl Crazy』1943 Soundtrack(Amazon.co.jp)
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