1946/1950年
作詞/ジャック・プレヴェール Jacques Prevert
作曲/ジョセフ・コスマ Joseph Kosma
英詩/ジョニー・マーサー Johnny Mercer
窓辺に木の葉が舞い落ちる
赤く黄金色に染まった秋の落ち葉
夏の日のキッス、あなたの唇を思い出す
日焼けした腕をそっと撫でる
あなたが去ってから次第に夜が長くなった
やがて冬の歌も聞こえてくることだろう
枯葉の季節
あなたへの想いが、また甦ってくる
マルセル・カルネが監督した映画『夜の門』(1946年・日本未公開)のテーマ曲として、ジョセフ・コスマが作曲、ジャック・プレヴェールが作詞したシャンソンの名曲。
映画は劇中、このメロディを繰り返し使用し、主演のイヴ・モンタンが人妻(ナタリー・ナッティエ)と逢い引きする深夜の場面では、モンタンのハミングに導かれてナッティエが唄い、浮浪者のハーモニカが伴奏。最初は静かにほのかな想いを交換し、クライマックスでは不倫の炎を激しく盛り上るシンフォニックな展開の演奏になっていました。
翌57年にジュリエット・グレコがレコーディングして、フランスでヒット。シャンソンのスタンダードとして定着します。
金儲けになりそうなことなら何にだって飛びつくのが、アメリカのビジネスマン。そして、中国人であろうとアラビア人であろうと、英語で話すのがハリウッド流。1950年、Capitolは英語の歌詞をジョニー・マーサーに依頼。レコードは、ビング・クロスビーやジョー・スタッフォードなど12人の歌手が競作する勢いでしたが、目論見は外れ、それほど評判になりませんでした。
アメリカでの人気は、ロジャー・ウィリアムズ(ポピュラー畑のピアニスト)が、55年に録音したレコードがヒットしてからで、同年にはエロール・ガーナーのベストセラー「Concert by the Sea」も録音されています。また、56年にはジョン・クロフォード主演で『Autumn Laeves』という映画も製作され、映画ではナット・キング・コールが唄いました。
このように「Autumn Leaves」は、最初はJazzとしてではなく、フランス産のポピュラー曲として認知されていたのですが、1958年の、マイルス・デイビス=キャノンボール・アダレイの双頭セッション・レコーディング「Somethin' Else」(Blue Note)で採り上げられた頃から、ジャズメンのレパートリーとして頻繁に演奏・録音されるようになりました。
Jazzとして録音された「Autumn Leaves」はどれくらいあるのでしょうか。かつて神田神保町にあったジャズ喫茶「響」のマスターと、レコードの枚数について調べたことがあります。
ヴォーカルとビッグバンド演奏は、ポピュラー/ムード音楽との境界線が曖昧なため集計から外しましたが、「スイングジャーナル」誌の86年10月号のディスコグラフィーに掲載されていたのが116枚。それから洩れたもの、その後に録音されたものを併せると、1990年の時点で、ざっと200枚くらいだろうと推測されました。
マスター(大木俊之助さん)の最初の著書「ジャズ・ジョイフル・ストリート」にも書かれていましたが、当時、俺は「Autumn Leaves」のレコードばかりを集めていたのです。本のなかでは56枚と書かれていますが、それからもしばらくは蒐集を続け、128枚まで集めました。<莫迦でしょう?
ガイド書にあるような有名なレコードはもちろん、聞いたこともないレーベルから出たヨーロッパ盤まで、ジャケットに「Autumn Leaves」と記載されたものはすべからく買い漁っていました。
この世には実に様々な「枯葉」が存在していて、スチール・ドラムで演奏したヘンテコなものまで見つけてしまいました。<大馬鹿でしょう?
まぁ、そのような酔狂が永遠に続くわけもなく、なんとなく飽きてほとんどを売り払ってしまいましたが、それでも20〜30枚くらいは手許に残してあります。
ジョニー・マーサーの英詩には、ヴァース(前口上のようにして唄われる導入部)が無いので、ヴォーカル盤ではヴァースのみ、ジャック・プレヴェールのオリジナル(フランス語)の歌詞を唄っている歌手も多くいます。英語もロクに訳せない俺にフランス語など分かるわけもなく、今回は英詩だけを意訳しました。プレヴェールのオリジナル詩も、晩秋に恋人と離別する情景を歌ったものなので、繋いで唄っても違和感はありません。
ヴォーカル盤はスローなバラードがほとんどですが、なかには、メイナード・ファーガソン・ビッグバンドをバックに強烈にスウィングするダイアン・シューアのConcord盤(「Swingin’For Schuur」2001年)なんかもあります。
オリジナルのメロディを自由奔放にフェイクし、ハイ・テンポのスキャットで唄ったサラ・ヴォーンのPablo盤(「Crazy And Mixed Up」1982年)は、発表当時、歌詞の意味を無視した傍若無人な録音と非難されました。これが「スイングジャーナル」誌の年間ベスト・ヴォーカル・レコードに選定された頃から、俺は専門誌のディスク・レビューをアテにしないようになりました。こんなもん聴いて悦にいってる奴はスノッブ(気取り屋)に決まっておるわい。
いや〜、「Autumn Leaves」について語り出すと(128枚分の怨念がこもっているせいか)止まらなくなりますね。
推薦盤4枚は、数ある枯葉のなかから、あえて黒っぽいものだけを選んでみました。ガイドブックなどでよく採り上げられているアレは、別格なので別ページに置いてあります。
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