Elmer Bernstein By Elmer Bernstein with RPO POPS (1993)

エルマー・バーンスタイン自作自演 with RPO POPS
Elmer Bernstein By Elmer Bernstein
with RPO POPS (1993)

(Denon/COCO-70509)

01 荒野の七人 (1960)
  THE MAGNIFICENT SEVEN (04:59)
02 アラバマ物語 (1962)
  TO KILL A MOCKINGBIRD (08:19)
03 黄金の腕 (1955)
  THE MAN WITH THE GOLDEN ARM (04:00)
04 グリフターズ 詐欺師たち (1990)
  THE GRIFTERS (08:15)
05 荒野を歩け (1961)
  WALK ON THE WILD SIDE (04:00)
06 ハワイ (1965)
  HAWAII (04:59)
07 大脱走 (1963)
  THE GREAT ESCAPE (02:19)
08 ゴーストバスターズ (1984)
  GHOSTBUSTERS (02:47)
09 ハリウッド・アンド・ザ・スターズ (1963 TVドキュメンタリー)
  HOLLYWOOD AND THE STARS (02:59)
10 ランブリング・ローズ (1991)
  RAMBLING ROSE (02:58)
11 ヘビー・メタル (1981)
  HEAVY METAL (04:56)
12 マイ・レフトフット (1989)
  MY LEFT FOOT (07:10)
13 十戒 (1956)
  THE TEN COMMANDMENTS (07:49)

total time: 65:35

Composer and Conductor by Elmer Bernstein
Royal Philharmonic Pops Orchestra

Recorded at Henrywood Hall, London
September 9-10 1992

バーンステイン自作自演
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ロイヤル・フィルハーモニー・ポップス管弦楽団をエルマー・バーンステインが指揮した、自作映画音楽集。
ロイヤル・フィル・ポップスは、その名称からも判るように、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団からのメンバーで構成されたポップス・オーケストラ。英国王室の庇護のもと運営されていたロイヤル・フィルでしたが、このCDが録音された1990年代前半は経済危機で楽団の存続が危ぶまれていた頃で、とにかく運転資金をなんとか工面するため、やたら多くのレコーディングをやっていました。
駅構内のワゴンセールにて、1枚350〜1000円くらいで安売りされているTringレーベルのCDも、(たぶん)この時期に録音されたものです。
(余談ですが……ディスコビートにのせた名曲メドレーで大ヒットした「フックト・オン・クラシック」シリーズも、このオーケストラによるもの)
ポップス楽団の設立は1987年。ヘンリー・マンシーニ、バーンステイン、ジョン・スコット、デイヴィッド・アーノルド、スタンリー・ブラックなどを指揮者に迎え、世界各国でコンサート(日本へはマンシーニ指揮で来日)、映画音楽やムード音楽などの安っぽい録音を矢継ぎ早に行っていたのだけど、今はどうなってるのかしら?
母体のロイヤル・フィルは、ダニエレ・ガッティが主席指揮者に就任した1996年ごろから人気を取り戻し、ロンドンのケイドガンホールという比較的小規模なホールに本拠地を移して(危ないと噂されながらも)活動継続中です。
もっともロイヤル・フィルと映画音楽は、ポップス・オーケストラ設立前から仲良しこよしの関係だったわけで、エルマー・バーンステイン指揮バーナード・ハーマン作品集のほか、モーリス・ジャールやジョン・バリーも、この楽団を指揮して自作の作品集を発表しています。ですから、別枠でポップス楽団を設けた真意がよく分かりません……運転資金を捻出するための方便だったのかも。

さて、「Elmer Bernstein By Elmer Bernstein」と題されたバーンステイン自作自演盤には、彼の代表作(比較的新しい映画を含む)が13曲収録されています。
今回のポップス・オーケストラ用に編曲された演奏で、『荒野の七人』はイントロ部分が省略されていたりします。『黄金の腕』、『荒野を歩け』といったジャズ風味の作品は、(これは仕様がありませんね)オリジナルとはずいぶん異なる印象の演奏です。それでもまあ作曲者自身の編曲・指揮ですから、ヘンテコなものにはなっていません。
どうなんでしょう……このCD、バーンスタインが触ったものならトイレットペーパーでも手に入れたい、といった熱狂的なマニアか、一流オーケストラが演奏する映画音楽も、たまに聴いてみるのもオツかもねという、(サントラ盤蒐集にこだわりのない)一般向けのような印象です。
(つまり、普通の映画音楽愛好家は相手にしていないってことね)

『アラバマ物語』、『グリフターズ 詐欺師たち』、『ハワイ』、『十戒』といった、組曲として構成された比較的長めの曲が、このディスクの聴きものになっています。
バーンステインの最大の特徴は、スポーティな躍動感。代表作『荒野の七人』、『大脱走』マーチは勿論のこと、重厚なデミル史劇を勢いで押しまくる『十戒』のスピード感は、このようなかたち(8分弱の演奏時間)で聴くと一層際立ってきます。そういった点からも、『エルダー兄弟』や『コマンチェロ』など、西部劇音楽がもっと選曲されていたら嬉しかったんですけどね。
『アラバマ物語』や『マイ・レフトフット』にみられる叙情性も彼の魅力のひとつ。晩年はアクション映画の傾向が変わり、60年代の西部劇や戦争映画のようなサウンドは敬遠されがちだったため、こっち方面での作品に本来のバーンステイン・タッチが発揮されていたように思います。

エルマー・バーンステイン Elmer Bernstein
1922年4月4日、ニューヨーク市ブルックリン生まれ。ジュリアード音楽院でピアノと作曲を学んだのち、1943年、空軍に入りグレン・ミラー・バンドのアレンジや、空軍放送の音楽を担当。除隊後、国連キャンペーン番組の音楽を担当したことがきっかけとなってハリウッドに招かれ、1951年『Boots Malone』で映画音楽デビュー(同年製作『Saturday's Hero』がデビュー作という説もあり)。
1955年、ウエストコースト・ジャズメンをフィーチャーした『黄金の腕』がアカデミー作曲賞候補となり、翌56年、セシル・B・デミルの超大作『十戒』に(急病で倒れたヴィクター・ヤングの代打として)大抜擢される。以後、西部劇/戦争アクションから都会派コメディ、『アラバマ物語』のような社会派ドラマから『フライング・ハイ』のようなジャンク・ムーヴィーまで多彩なジャンルの映画に、節操なく幅広く音楽を提供。
1966年の『モダン・ミリー』で、第40回アカデミー作曲賞受賞。(同賞のノミネートは、作曲賞で7回、編曲賞で2回、歌曲賞で4回)
2004年8月18日、長い闘病生活の末、死去(死因は公表されていない)。享年82歳。

晩年のバーンステインの仕事をつらつら眺めていると、そのあまりの不遇に涙が出そうになります。(これは同じころ天に召されたジェリー・ゴールドスミスにも言えることですが)ベテラン音楽家に対する敬意がまったく感じられない。ふたりとも最期のあたりは、どうでもいいような糞映画ばかり担当しているし、リジェクト(依頼されて作曲したあとで、若造に「これだめ」とか言われてボツにされた作品)も多い。
それでも『エデンより彼方に』(2002年)が遺作になったのだから、バーンステインの最期は、ゴールドスミスよりマシだったのかも知れません。

「Elmer Bernstein By Elmer Bernstein」は、DENON自慢のPCMデジタル録音で、弱音部から強音部までクセなく自然に響いてクリア。優秀な音質だと思います。

現在、市場に流通しているバーンスタインのコンピレーション盤には、サントラ音源とバーンスタイン自演の録音を集めたVarese Sarabandeの「Great Composers: Elmer Bernstein」と、シティ・オブ・プラハ・フィルハーモニックの演奏によるSilvaレーベルの2枚組「The Essential Elmer Bernstein Film Music Collection」があります。
新しい作品をメインに収録しているVarese盤よりも、Silva盤のほうがバーンステインの全貌が見わたせる選曲になっているし、2枚組でボリュームもありオススメ。普通の映画音楽ファンには、こちらのほうが好まれそうです。

エルマー・バーンステイン

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